東京メトロの運賃だけで唯一行ける埼玉県。コスパ抜群の街
池袋から東武東上線急行で片道僅か14分。いかに池袋から埼玉が近いのかを実感できる「和光市駅」。ここは東京メトロ有楽町線および副都心線の駅でもあり、東京メトロのお安い運賃だけで来る事が出来る埼玉県唯一の駅。そのアドバンテージたるや他の追随を許さないものと思われるが知名度の低さが仇となり不人気極まりない。113番目の新元素ニホニウムも和光市の理化学研究所で発見されたんだぞ。もうちょっと注目してやれ。
米軍と自衛隊の街・和光市、広大な米軍基地跡地に広がる公園と公的施設の数々
やはり和光市がマイナーなのは人口8万人の小さな市である事に起因するのだろうが、元々は戦前に陸軍予科士官学校や軍需工場があり、戦後も米軍基地や陸上自衛隊の基地もあるというれっきとした「軍都」でもある。今も米軍が使用している広大な放送送信所は異様な光景を見せている。
日本に返還された米軍基地キャンプ・ドレイク(サウスキャンプ)の跡地や軍需工場の跡地には西大和団地などの団地群や本田技研工業、さらに国立埼玉病院、税務大学校、司法研修所、それと先に触れた理化学研究所といった公的性質の強い施設が目白押しになっている。結構これだけ並べると小さな街なのにドエライものである。
元々は北足立郡大和町という地名だったが、市制施行時に神奈川県大和市との混同を避けて新市名を公募した結果この地名となった。理研やホンダがあるのかして税収も良く2016年以降はずっと地方交付税不交付団体入り。近隣三市との合併も反対多数でご破談に。
同じく基地跡を整備して作られた和光市民の憩いの場「和光樹林公園」もひたすら広大。いささか殺風景さはあるが休日でもそれほど園内は混雑する事もなく子連れ家族ものびのび過ごせる、という穴場的スポットである。そこから道路を挟んですぐ向こうはもう練馬区。荒川に隔てられた川口以上に「ほぼ東京」感を味わえる。それが和光市。
没個性的な駅前風景がゲンナリするが最低限のものは揃っている
前振りの段階で随分グレートな街だなという流れになってしまった和光市だが、そんな駅前風景はどうかというと、これがもう安定の東上線クオリティ過ぎて、パチンコ屋とゲームセンターばかりという知的要素の欠片も感じさせない典型的な「埼玉の駅前仕様」となっていて非常にゲンナリしてしまう。家賃が安いという理由以外に選ぶきっかけが見当たらない東上線だものしょうがないか。
理研の職員とか、税務大学校の生徒とか、こんな駅前のだらしない雑居ビルで寄り道したり絶対しねーだろと思うような雰囲気すらある。しかし2008年の副都心線開通以降、新宿・渋谷・今では東横線方面にまで電車一本で行けるようになった事で、便利でコスパが良い街と判断した新住民が増加しており、地下鉄の運賃だけで都心に出られる和光市駅周辺の地価上昇が顕著で、隣の成増とそれほど価格に違いが無くなっている。
だが、隣の成増や板橋区の駅前に見られるようないかにもな下町的商店街は和光市駅前にはない。でかいイトーヨーカドーが買い物拠点となっているだけである。この辺の住民は何かあればすぐ池袋に出て用事を済ませてしまうので、駅前にせいぜいヨーカドーぐらいあれば事足りるのだ。駅前だけ見ている限りは「寝に帰るだけの街」、そこに文化的な要素、知的な要素は皆無である。
特にドケチ生活が身に沁みている東上線民のはしくれである和光市住民が殺到するヨーカドー真向かいの「丸八青果」。休日には凄い人だかりになっている。ヨーカドーは生鮮食品もそれなりの値段で売っている事が多いので、野菜と果物だけはここで買うという客も多いようだ。