東急王国「田都マダム」御用達タウンの一つ。東急が無ければ生きていけません
80年代のバブルの勢いに乗って「金妻ブーム」というものが生まれ、何もなかった山里を切り開いた新興住宅地をブランドタウンに作り変えた商売上手の鉄道会社「東京急行電鉄」の集大成とも言える東急田園都市線の街の数々。その中でも代表格と言っていいのが横浜市青葉区に属する「たまプラーザ」。そもそもこの駅名も開業当時の東急の五島昇社長が直々に命名しているのだから、街の誕生から既に東急一色なのである。
渋谷から急行で約20分という微妙な距離感にあるが、駅のホームに降り立ち改札口に上がるとこの通りの巨大なガラス張りの駅舎がデデーンとそびえる姿を目の当たりにし、東急の本気を見せつけられる。どこかの国際空港か、海外の主要都市のターミナル駅のそれを思わせる高い天井を持つ、たまプラーザ駅の新駅舎は2009年に完成したもの。
しかしどれだけ東急ブランドが有難くとも、一般のサラリーマンにとってコスパ的に良いかと言われると全くもって「NO」としか答えを返せないのが田園都市線という路線。既に激しくキャパシティオーバーしている事から「お客様混雑による遅延」が日常的になっているばかりか、車内でいきり立った乗客(主におっさん)による暴力行為が度々起こるのも悪評となっている。他線に迂回するにも一つ隣のあざみ野まで遠ざかってそこから乗れるのが「横浜市営地下鉄ブルーライン」だもの、てんで使えない。
ガチな田都セレブは自家用車やタクシーでスイスイと東名高速で都心に行けるのだろうが、その東名高速も朝の混雑が結構なものとなるので、とても便利だとは思えない。
電車も東急、百貨店も東急、ショッピングモールも東急
たまプラーザ駅の北口を出ると真正面にそびえ立つ「たまプラーザテラス」なる商業施設。エキナカモールや東急百貨店たまプラーザ店も含めた総称となっているが、これも東急電鉄お得意の「囲い込み戦略」が露骨に現れた特徴的な街並み。一応、ヨーカドーとかコープとかも申し訳程度にあるのだが、この街では「東急」以外は完全に脇役に甘んじている。
自社の鉄道に乗せ、自社の開発した分譲地に住ませ、自社の置いた百貨店やモールで買い物させる、そんな「東急スタイル」を他所とは違うワンランク上の郊外型生活と思い込み有難がっているのは、今や60代の老人となった「金妻世代」が主である。ペデストリアンデッキで駅前と直結している築年数50年「たまプラーザ団地」の住民までオホホザーマス状態なんですが、何なんでしょうね。
ここ「たまプラーザ」と青葉台の二駅は駅前一等地に東急グループの商業施設が集中している「東急王国」とも言える人工的な街となっている。それが好きか嫌いかでこの街への評価がはっきり分かれるだろう。過剰な通勤時間帯の混雑や都心からの距離の遠さ、その割に家賃相場がべらぼうに高い、それらを不便に感じても、それでも住みたいという理由が無ければこんな街を選んでもしょうがない。