川越までの東上線の途中駅で最も栄えている街。駅の北側が志木市で南側が新座市
池袋を起点に、小江戸川越を含めて郊外のビミョーな住宅地を結ぶ「東武東上線」、その中でも川越から手前の途中駅で恐らく最も栄えていると思われるのが「志木駅」である。有料座席指定のTJライナー以外の全ての種別の電車が止まり、乗り換えのない単独駅としては東上線内で最も乗降客数が多い。
志木駅は大正3(1914)年の東上鉄道開通当時より開業する古い駅である。駅北側にある宿場町「志木宿」は江戸時代から新河岸川の河川流通の拠点として栄えていた地域でもあり、当時の北足立郡志木町の有力者によって駅が誘致されたという歴史を持つ。しかし今となっては駅前に間抜け面のカッパが上目遣いで通行人を眺めるだけで、そんな歴史を知る者も少ない。
そんな志木駅前に降り立つと殊のほか人通りが激しい。田舎町だと思って舐めて掛かると面食らう街。志木駅はおおまかに言えば北口が志木市、南口が新座市と行政区画が分かれている。どちら側も駅前一帯は商業ビルで埋め尽くされかなり栄えている。最上位の快速急行電車だと池袋まで最短16分。通勤時間帯でも約20分少々である。
北口に出れば志木市役所の出張所が、南口に出れば新座市役所の出張所がそれぞれあるという奇妙な“市境の街”となっているのが特徴的。どこが中心市街地なのかさっぱり意味不明な新座市も、恐らく最も市街化している地域がこの志木駅南口となる。
マルイや駅ナカを除いて地元民の普段遣いができる場所と言えば、志木駅南口にある「イオン新座店」が志木駅周辺で一番大きな総合スーパーとなる。ここは元々ニチイからサティになってイオンに変わったパターンですね。ちなみに北口にはダイエー志木店もあったが、こちらは閉店してしまい跡地はマンションに変わっている。
しかし志木側も新座側も駅周辺の街並みの下品さはさすが東上線クオリティという他ない。ガラの悪そうな店ばっかりなんですけれども、こう見えて志木駅の近くには超有名お坊ちゃま学校「慶應義塾志木高等学校」なんかもあって、偏差値76という驚愕の数値をはじき出している始末。埼玉県内どころか国内トップクラスのエリート校であり、学生達は首都圏一円から、この東上線のビミョーな街を目指して通い詰める事になる。
そんな慶應のお坊ちゃまの日常風景がこんな下品な雑居ビルだらけの街というのもなんとも頂けないものだが、慶應の農業高等学校が戦後の昭和23(1948)年から当地にあったというのが志木に一見場違いとも思えるエリート校が存在するそもそもの理由なのである。その当時の志木町は今のように宅地化もしていない片田舎であった。