都営大江戸線をひたすら待ちわびる練馬の隣の埼玉の田舎町
東京都心にも程近く、すぐ隣に練馬区があるにも関わらずひたすらマイナーな存在に甘んじている「埼玉県新座市」。人口16万人を有する街ではあるが、その市域の北には東武東上線が、南には西武池袋線がかすめるものの、市内唯一の鉄道駅はギャンブルライン武蔵野線の新座駅しかないという状況。恐らく新座市民の多くが東武東上線の志木駅か、西武池袋線のひばりヶ丘もしくは清瀬駅が最寄り駅で、それぞれ生活圏が全く違うが、ひとまず当ページでは武蔵野線新座駅を軸に考えたい。
一応ながら武蔵野線新座駅が新座市における中心市街地である野火止地区の外れにあり、新座市役所や市内屈指の名所である平林寺もギリギリ徒歩圏内にあるが、新座駅周辺そのものは発展度も微妙で、辛うじて立ち並ぶ商業ビルには下品なパチンコ屋や居酒屋が営業しているのみ。やはり武蔵野線というだけでダメである。
そもそも新座駅は武蔵野線開業時には駅の設置に関して一部の地元住民の反対運動が起きていて、開業後も長らく駅周辺にはぶどう畑が立ち並ぶだけの大地主の土地が広がるばかりで全く発展せず、ようやく2000年代には駅南口で再開発が始まり、ご覧のような築年数の浅いマンションがちらほらと連なるようになったが、目の前にあるトイザらス等が入居する商業施設の名前が「ラ・ヴィーニュ」(フランス語でぶどうの木を意味する)だもの、アグリカルチャー感ぱねぇっす。
新座駅前の高架下飲食店街「げんき一番街」も全然元気じゃない件。全くもってやる気の無さそうなチェーン店ばかりである。この通り、新座市の中心となるはずの新座駅は武蔵野線というだけでビミョーな存在に成り下がっている。やはり都心に直結する鉄道が市内に欲しい!というのが行政や市民の総意、という事らしい。
新座市民の足は路線バス。それでも来て欲しい大江戸線
そんな経緯で東京のベッドタウンとしての開発をはねのけるなどして、結局は都市の発展から取り残された新座市の中心市街地を歩いているとしょっちゅう目にする「大江戸線誘致」をアピールする横断幕の数々。「みんなの力で大江戸線を新座市へ」という文言が、新座市のマスコットキャラである「ゾウキリン」(平林寺や武蔵野の雑木林を掛けている安直センス)と並んで描かれている。実に涙ぐましい。
しかし『都営』大江戸線が埼玉県までやってくるのは我々の世代が生きている間には恐らく実現しなさそうである。唯一、都営地下鉄が千葉県にはみ出している都営新宿線は混雑極まりない総武線や東西線のバイパスとしてそれなりに開発する意義があったのだろうが、バブル期に整備され無駄に高コストだったせいで長年赤字たれ流しだった都営大江戸線には世間の目も厳しく、構想にある東所沢までの延伸どころか、終点の光が丘から土支田、大泉学園町までの先行開業予定区間も未だに着工すらしていない。新座市民は結局どこに行くにも路線バスや自家用車を使うのがデフォなのである。