ドヤ街山谷と小塚原刑場跡。「最暗黒の東京」を象徴した街は現在…
「南千住」と言えば東京を代表するドヤ街山谷の最寄り駅としてあまりにも有名になっている土地ではあるが、鉄道網は地下鉄日比谷線、JR常磐線、つくばエクスプレスの三線の駅があってこう見えても交通の便は良く、特に再開発エリアである駅東側の汐入地区はファミリー層が数多く住むマンションが乱立する住宅地となっている。
荒川区と台東区に跨るドヤ街山谷。ドキュメンタリー映画「山谷 やられたらやりかえせ」の通り、昔は西成同様凄い場所だったが、今では福祉で暮らす独居老人だらけの寂れた下町になってしまった。ドヤから外国人向け安宿に転業する旅館も多数あり。陰気臭いドヤ街のイメージも俄に変わりつつある。
駅周辺は江戸三大刑場の一つ小塚原刑場があった。南千住駅の目の前にある小塚原回向院には吉田松陰の墓や解体新書の記念碑などがある。その隣にある延命寺の「首切り地蔵」も刑死者の霊を弔う目的で置かれたものであり、間近に見るとかなり生々しい。
そして駅の北側は「コツ通り」なる意味深なネーミングの商店街が。少しこの辺の土を掘れば刑死者の骨が出てくるからコツ通りという名前がついたという説がある。ドヤ街、遊郭、刑場…嫌悪物件(NIMBY)とされる要素が東京においてはすべからくこの場所に集められている事は確かだ。
汐入地区とアクロシティ…南千住二大新興マンション街
先に述べた通り「忌み地」とされている条件が役満状態となっている南千住であるが、それでも住宅地としての需要はかなりのものがある。日比谷線、常磐線、TXいずれでも都心まで片道10分で行けてしまう交通便の良さは何者にも代えがたいのであろう。
南千住八丁目に属する「汐入地区」は隣り合う陰鬱なドヤ街とはある意味隔離された空間となっていて、ここだけは立派なタワーマンション群にららテラスという商業施設もあって、豊洲あたりにいるかのような感覚に陥りそうになる。同じ南千住でも周囲の街並みとは全く性質も違うし人種も違う。不思議な土地だ…
さらに千住大橋から隅田川上流に行くと南千住六丁目に属するリバーサイド高級マンション街「アクロシティ」が姿を現す。1990年代に完成した新興マンション群で場違いに高級感を漂わせる一角である。
皮肉にもこの場所が有名になったのは1995年3月、地下鉄サリン事件から間もない時期に当初オウム真理教関連事件の一つとされていたが結局犯人が分からず時効成立した「警察庁長官狙撃事件」の現場となった事だ。現場を見に訪れたがひと気も少なく、どこかしら寒々しさを感じるマンション群だ。