ド都心千代田区唯一の人口を誇る住宅街、普通の人にはとても住めません
どうも東京23区の中で「勝ち組が住む区」として扱われるのが、都心部にある千代田区・中央区・港区・文京区といった地域。しかしそういった所でも古びた下町だったり、じめじめした谷戸の窪地などに無理くりペンシルハウスを建ててヒーコラ窮屈に暮らしている勤め人もいたりするものだが、そこでも“真の勝ち組”しか住めないのはやはり皇居が鎮座する千代田区を置いて他にない。
都心回帰で人口が増えつつあるが、それでも住民が約6万5千人(2019年6月時点)というのが千代田区。その中でも最も人口密度が高い場所と言えば、皇居のすぐ西側一帯に広がる「番町・麹町地域」である。四ツ谷・市ヶ谷・麹町・半蔵門の四駅に取り囲まれたごく狭いエリアに千代田区の人口の4分の1以上、約1万7千人が暮らしている。
江戸時代には旗本の武家屋敷街として開け、明治から戦前に掛けては政府の高級官僚や様々な文人が暮らしたという、由緒のありすぎっぷりは他の追随を許さない。昔も今も東京における中心の中心を担う「上級国民の街」としての風格を崩すことはない。ド都心なのに「閑静な住宅街」っぷりが凄い。この独特な街の雰囲気は、現地に訪れてみなければ理解し難いものがある。しかし閑静すぎるし都心すぎて人通りもまばら。寂しい街やね。
番町地域には千代田区一番町から六番町までがあるが、このうち六番町は「住宅地公示地価」が日本一高い(393万円/㎡:2019年時点)ことで知られている。雙葉中学校・高等学校などがある、四ツ谷駅寄りの一帯だ。普通に先祖代々からの土地持ちだろうなといった戸建住宅もあるにはあるが、たいてい見かけるのはこのようなたいそうな佇まいの高級分譲マンションばかりだ。
今どき勝どきやら豊洲やら、はたまた青山やらで粋がっている小金持ち上京カッペ民でもちょっと太刀打ちできないのがこの地域の住宅価格相場。ちょっとファミリー向けの物件を探すものなら築40年オーバーのヴィンテージマンションでも最低7000万円台、新築となると1億後半~2億するのはデフォである。これが賃貸だと最低でも25万、中には50万、60万といったものもゴロゴロ見られる。ひぇ~。
千代田区に住むというだけでもステータスだとか優越感が常に付きまとうものだろうし、毎日の通勤ラッシュと無縁になる生活も「上級国民」ぶりを増すものだろう。しかしド都心であるからこその「不便」もまた付きまとうのも事実。スーパーもあるにはあるが、二番町のよしやセーヌ、三番町のマルエツプチくらいしか買い物できる場所がない。あとはネット通販とかに頼るしかないかね。
エリートの卵を養成する教育機関が揃っている、究極の文教地域
この番町・麹町地域には公立御三家の一つとして有名な「番町小学校」をはじめとして名門教育機関もまた密集している。我が子をエリート官僚にでも育てたい全国の教育ママはこの地をすべからく目指すのだろうが、そもそも地代が高すぎて無理なので、諦めて千代田区外の四谷だの本郷だのの谷底の窮屈な物件にしがみつくしかない。
また、番町・麹町地域には「女子御三家」として挙がる名門校のうち、桜蔭を除く女子学院・雙葉の二校が堂々と鎮座している。四ツ谷駅にも程近い場所にある雙葉中学校・高等学校のご立派すぎる校舎を眺めて、“格差”というものに酔いしれる事もできる。こういう所に通う“才女”の家庭なんて、そもそもスタートラインが違うんだよ。
半蔵門駅北東側、靖国神社寄りの三番町には「大妻女子大学」のキャンパスもある。こちらも歴史のある大学だが、元々の成り立ちが裁縫と手芸の学校ということもあり、前述の学校とは異なりエリート養成校ではなく“良妻賢母”の卵を育てる「お嬢様学校」。お決まりのご挨拶は「ごきげんよう」。附属の中学・高校は一貫校である。