日比谷線直通電車の始発で座って通勤できる事だけが利点の街
浅草から北千住を経由し埼玉県東部の微妙な住宅地を結ぶ東武伊勢崎線(意地でもスカイツリーラインとは言わない)。そのうち北千住から地下鉄日比谷線に直通する電車の始発駅となっているのが「北越谷」である。同線もここ北越谷までは大部分が高架化され、しかも複々線しているため、都心への距離に比べると、通勤時間帯のノロノロ運転や遅延に悩まされる事も比較的少ない。
北越谷駅自体、今となっては郊外の何の変哲も無い駅のようにも思えるが、その歴史は古い。明治32(1899)年の東武伊勢崎線開通当初から「越ヶ谷駅」として開業、日光街道の宿場町として発展してきた越ヶ谷宿と皇族が利用する埼玉鴨場の最寄り駅として当初駅構内には貴賓室が設けられるなどしていた。
後発で開業した越谷駅に中心駅の座を譲った後は現在まで日比谷線もしくは半蔵門線直通の普通・準急電車しか止まらないローカルな駅であり続けてきたため、駅周辺の発展ぶりには乏しいのが特徴である。「日比谷線直通電車が始発で座って乗れる」のが利点だという理由でこの街を住処に選ぶサラリーマン世帯もいるようだが、普通電車でノロノロ都心へ向かうと秋葉原まで40分超、霞ヶ関まで1時間かかる。日々の通勤には我慢強さが必要な遠さだ。
駅東口にある複合商業施設「パルテきたこし」には東武…ではなく、なぜか東急ストアが入っていたり、ダイソー等も入居している。普段遣いの買い物はもっぱらここに依存することになるだろう。周辺には飲食店や商店も一通りあるが、越谷駅や南越谷(新越谷)と比べてもいかんせんラインナップがしょぼい。
ちなみに「パルテきたこし」の上層階は28階建てのタワーマンション「ライオンズステーションタワー北越谷」になっているが、駅前一等地にも関わらず中古賃貸物件では2LDKで月10万で借りられる物件がある。分譲で出た場合も最多価格帯は3000万円台といったところ。サラリーマンが妥協して住むには手頃なタワマンですね。
駅周辺の街並みも没個性的で全然楽しそうな感じでもないのがサラリーマンが妥協して住む街の所以なのであろう。しかしこのエリア、オウム真理教の後継団体「アレフ」の施設も存在している点は注意が必要だ。(Aleph本部:埼玉県越谷市北越谷1-20-6-101)
北越谷駅西口の一画に鎮座する超絶昭和レトロ感漂う飲食街。とりわけ近所の呑んだくれ老人の溜まり場と化しているであろう「パブレストランサンゴ」といい店構えの渋い物件ばかり。東武伊勢崎線沿線で長年暮らすと、さぞかし「場末」が似合う老後を迎えられそうだ。
宿場町越谷の総鎮守「久伊豆神社」へも北越谷駅が最寄りとなる。足立区含む東京鬼門エリアの延長線上にありあらゆるアウトローや流れ者が住み着く不運の地となった越谷市だが、この場所に来ればこの街の本来の姿が分かるというもの。「クイズ神社」とも読める事から、クイズ番組出演者にとっての聖地として、そっち方面の参拝者も多いというネタもある。
久伊豆神社近くにある「越谷アリタキ植物園」。植物学者である有瀧龍雄氏の私有地が市に寄贈された、やたらと怪しげな置物が置かれている玄人向けの植物園となっている。入場無料なのは有難いがあまりに野趣溢れ過ぎていて、好き嫌いが分かれそう。むしろ珍スポット扱いか?