ベッドタウンとなった川口「キューポラのある街」は健在でした
東京の北の玄関口「赤羽」からたったのひと駅、荒川を跨いだすぐ向こうに広がる工業都市、埼玉県川口市。この街と言えば吉永小百合主演の「キューポラのある街」にある通り、鋳物産業が昔から盛んだった土地。あの映画の登場人物や街のドギツさが印象に残るが、時代が違う今ではめっきり雰囲気が変わってしまっている。
鋳物工場は姿を消し、代わりにあるのは高層マンションばかり。ベッドタウンとして開発された現在の川口駅周辺は隣の赤羽のような猥雑さも見当たらず、すっきり小綺麗になった駅前にはでかい市立中央図書館が入った複合施設が。名前は「キュポ・ラ」とは安直過ぎて笑える。さらには都会っぷりをアピールするかの如くそびえる「そごう川口店」も市民の自慢。
旧市街地は駅前ではなく荒川に近い金山町あたり。かつての栄華を漂わせる昔ながらの情緒ある街並みも見られる一方、僅かながら鋳物工場が市内各所に点在しており、日本屈指の鋳物の産地である面影は充分に感じさせる。また、こうした工業地域では「多少の塵埃、騒音等な免れませんので、御承知下さい」と書かれた看板が掲げられている。
「キューポラのある街」が上映されたのは昭和37(1962)年の話。女優・吉永小百合は当時17歳。半世紀以上前の映画だが、最後のシーンに登場する川口陸橋など当時のまま残っている箇所が未だにある。
川口市の中心繁華街「川口樹モール」はどうなのか
JR川口駅東口を降りてそごうの横を通り過ぎて東側に向かうと南北に伸びる商店街「川口樹モール」(川口銀座商店街)がある。ここが名実ともに川口を代表する中心繁華街と言える街並みが形成されている訳だが、軒並みどこかで見た事のあるチェーン店ばかりが占拠しイマイチ個性には欠ける。埼玉の繁華街なんてどうせそんなもんだと諦めるしかないが、川越のクレアモールや大宮の南銀座のような勢いも感じられず中途半端な感じが否めない。
正面のイトーヨーカドーもよく見りゃ貧民低所得世帯向けのディスカウント店「ザ・プライス」だし、外食店も人通りの良い所は「すき家・かつや・てんや・日高屋」のお決まりコンボである。やや駅から外れた場所に「アリオ川口」があって、人の流れが分散している事もあるのだろう。商店街で最も流行っているのは大型パチンコ店「ピーアーク」くらいのもの。そして呑助がそそられるような赤提灯も隣の赤羽よりは目ぼしさに欠ける。
樹モールのシンボルでもある、川口鋳物を用いて造られた立派なオブジェ「ドンキホーテ像」も同名のDQN御用達ディスカウントストアの方が有名になってしまいDQN全開な店舗の看板に取り囲まれ心なしか居心地が悪そうである。まあしょうがない、埼玉だもの。
西川口、蕨と比べると川口って治安の面でどうなんでしょう
埼玉県内の京浜東北線沿線はガラの悪さでは定評がある。特に西川口と蕨の二駅は外国人人口が非常に多かったりアレな店ばっかりだったり、物騒な話題に事欠かずそれが地価の安さによく現れているのだが、一方でその手前の川口はどうなんだと言うと、確かにDQN向けの店舗ばかりでアレな感じは否めないが、それほど外国人タウン化や風俗街化はしておらず、前者の二駅のように「ゲッ」と思うような悪印象も感じない。
それどころか駅周辺はベッドタウン化が進みすぎてそうした毒気がさっぱり抜け切っているというのが正直な印象である。駅近くに限れば利便性も高く、キュポ・ラには綺麗な図書館もあってファミリー層にも割と抵抗無く住めてしまえる土地になっている。但し駅から離れた地域はどうか知りませんけどね。