羽根付き餃子と黒湯とネットカフェ難民の「“粋”がない下町」
東京都23区最南端の繁華街「蒲田」。町工場が密集する下町ゾーン大田区の中心で、立派な駅ビルには「グランデュオ蒲田」だの「東急プラザ蒲田」などもあるわ、西口東口共に商店街があり、普段遣いの店舗も飲食店も相当に充実している。都会の便利さと下町の気兼ねの要らなさが適度に混じった住みやすそうな街…
と思って街を見るとやたらとホームレスが多いわ、ネットカフェ難民を相手にした漫画喫茶が至る所にあるわ、21世紀日本の貧困の病巣がそこかしこに見えてくる…そんな街なのである。
寺島しのぶ主演の映画「やわらかい生活」の舞台として登場し、作中で「“粋”がない下町」と称された蒲田の街、そこもまた「東京」という言葉を当てはめるには若干はみ出した感じのある、同じ東京の北の外れにある赤羽にも似たアウトサイダー感がある立ち位置で、東京でも横浜でもない独自のブラックホール的空間が醸成されている。
なお、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅は600メートル程離れているので乗り換えに10分程度商店街を歩かなければならない。不便を解消する為に東急・京急両方の蒲田駅を接続する「蒲蒲線計画」がかねてから浮上しているが、具体的な目処は立っていない。
ネットカフェ難民の聖地と化した蒲田は「新ドヤ街」
JR蒲田駅周辺はネットカフェ・漫画喫茶の激戦区となっていて、大手のマンボー含めて熾烈な客取り合戦が繰り広げられている。中でも特筆すべきは「いちご」「コミックガーデン」といった蒲田限定インディーズ系漫画喫茶の数々。「1時間100円」「身分証明書不要」といった他ではなかなか見られないフレーズで、その日暮らしのネットカフェ難民を引き付ける。
ご丁寧にも漫画喫茶の周囲に激安コインロッカーや激安自販機なども設置してあり非常に仕組みが分かりやすい。こうした漫画喫茶で長期間「生活」しながら京浜工業地帯に多数働き口がある故、そのへんの日雇い労働や派遣バイトなどで食いつなぐ、目に見えづらい新たな貧困層が多数存在している。注意して見なければ、なかなか気づかない社会の病巣である。
外国人増えすぎてとうとうモスクまで出来ちゃったよ
ネカフェ難民もウエルカムで外国人もウエルカムな蒲田だが、ここ数年はベトナム人とネパール人のコミュニティが肥大化しつつある。しかし一部のネパール人は半グレ化、「ロイヤル蒲田ボーイズ」などと自称して蒲田の盛り場で“ヤンチャ“しまくっている模様。そんなネパール人コミュニティが旺盛な証拠にネパールレストランも増加中。
ムスリム系住民も蒲田界隈では増えているようで、駅前の怪しい雑居ビル街の一角にはとうとうモスクまで建てられ、多国籍化の一途を極めようとしている。川口・蕨の埼玉勢に対して川崎・蒲田の京浜勢が大躍進、それが昨今のトーキョー移民事情か。
蒲田と言えば羽根つき餃子。マジな庶民派中華街
蒲田周辺には「歓迎」「你好」「金春」など人気の大衆中華料理屋グループが多数展開している。いずれの店舗でも出される名物の「羽根付き餃子」が蒲田民のソウルフードとして愛されている。
特にJR蒲田駅東口にある「歓迎本店」は大田区の図書館や消費者生活センターなどが入居するお役所ビルの一階にあり特異な店構えが印象的。夕方6時台に入店しなければ行列は必至だが何を食っても旨いし安い。蒲田民は中華料理を食べにわざわざ横浜山下町まで行く必要もない。
蒲田と言えば「黒湯銭湯」でしょう
羽根つき餃子と並ぶ蒲田の名物が「黒湯温泉」である。元々蒲田に限らず都内や横浜あたりまでの地域には太古の植物性有機物を由来とする濃い茶褐色の温泉が湧き出る箇所が多く、特に蒲田周辺の銭湯ではコーヒー並みに色の濃い黒湯が扱われている。JR蒲田駅東口の「ゆーシティー蒲田」、蒲田本町二丁目の「蒲田温泉」、京急六郷土手駅前の「六郷温泉」あたりが当方のお勧め銭湯だ。
その他、蒲田駅周辺の写真集
昭和風味が残る蒲田駅西口のアーケード街「サンライズモール蒲田」
東急高架下のバーボンロード付近も雰囲気の良い呑み屋街が広がる
蒲田駅東口の中央通りは胡散臭い系の店が多く雰囲気がうらびれているが、ここが京急蒲田駅への近道だ
「やわらかい生活」の冒頭シーンにも登場したデパ屋観覧車がある東急プラザ蒲田。遊園地がリニューアルされご覧の通りに
西蒲田七丁目、すずらん通り裏手に残る戦後の赤線を思わせる呑み屋街。既に50年以上の歴史があるそうだ