「とりあえずIKEAとコストコとららぽーと置いときました」的な街
ギャンブルライン武蔵野線、埼玉県内最東端の街・三郷市にある「新三郷駅」。昭和60(1985)年の開業当初は広大な武蔵野操車場で上下線ホームが分断されていて「世界一ホームが離れている駅」としてギネスブックの世界記録に乗るという珍駅だったそうだ。当初は駅の西側一帯にある「みさと団地」住民が主な利用者であったが、都心に直接出づらい武蔵野線だけに駅前の発展は順調とは言えない状況にあった。
東京23区に隣接する街なのにやたら土地だけは余っていた事もあって、首都圏への住宅需要がいよいよ増してきた中、ようやく2000年代以降、武蔵野操車場跡地の広大な空き地が開発され「新三郷ららシティ」と称する商業地域をはじめとして駅前らしい風景となった。住所まで「三郷市新三郷ららシティ」ですよ。ゆとりネーミング感全開ってやつですかこれ。
新三郷ららシティの街開き後、新三郷という街は越谷レイクタウンと並ぶお買い物タウンとして、これまで電車の中で赤ペンを耳に挿して競馬新聞を読み漁るギャンブラー親父がたむろするギャンブルライン武蔵野線も様変わりし、IKEAの青袋を担いで歩くリア充ヤンキー家族が占拠する様子が日常的なものとなった。
新三郷“三種の神器”「IKEA・コストコ・ららぽーと」
団地以外に農地しかない片田舎でしかなかった新三郷に変化が訪れたのは2008年11月になってからの事である。武蔵野操車場跡地に華々しくオープンした「IKEA新三郷」を皮切りに、翌2009年7月には「コストコ新三郷倉庫店」、9月に「ららぽーと新三郷」が続々開業、地元の三郷市はおろか埼玉、千葉、東京、茨城といった各都県の広範囲から買い物客が殺到するショッピングタウンに変貌したのだ。
三郷市は常磐道と外環道が市内を走っているゆえに自家用車さえあれば交通便には非常に恵まれている。「新三郷ららシティ」と称するこれらの商業施設には休日ともなると遠方からの買い物客が殺到し周辺道路に激しい渋滞を引き起こす。大型モール好きにはたまらない街なのだろうが、この近所に近年やたら増えている分譲マンションにわざわざ住んでまで毎日通いたいとまでは思わない。
すっかり日本社会にも定着した感のあるアメリカの会員制スーパー「コストコ」内にあるフードコートではドリンク飲み放題付きのクソでかいホットドッグやピザがお安く食べられるのでコストコの買い物客に混じって団地住まいのビンボー人も有り難く使っている。年間5千円近い会費を払って会員にならなければ入場できないが、貧乏子沢山の家庭なら充分元は取れる。
新三郷を住む場所として考えるのは少数派のようにも思えるが、いずれにせよ大型モールに依存する生活スタイルを良しとするかどうかは個人のセンス次第であろう。しかし近年の三郷市もやたら外国人住民が増えてきた。ららぽーと新三郷のキッズコーナーもいつの間にか外国人の子連れママばかりだ。
あまりに安すぎる新三郷の土地
新三郷駅周辺に多数建設された駅チカマンションの相場を見ると、都内のそれとは全く違う激安っぷりが目に余る。3LDKで2400万円台だとか、ボーナス払い前提だと月4万円台の返済で住めるとあれば余裕でサラリーマンの給料で手が届く、そんな激安新築分譲マンションばかりなのである。そりゃ武蔵野線だもの、都心に出るのは乗り換え必須で面倒だが、二駅隣の南流山からつくばエクスプレスを使えば秋葉原まで40分そこそこで出られる訳だし、今となっては現実的に「勤め人が住める街」になっている。
新三郷ららシティの開発を主導する三井不動産もまたこの地に大型分譲マンションをぶっ建てて新住民を招き入れている。19階建て250戸「パークホームズLaLa新三郷」(2014年築)…安心の大手財閥系ながら中古物件の3LDKが3000万円台で手が届く。まさに三郷市は首都圏に残された最後のフロンティア。まあでも逆になんで財閥系のマンションでもこんなに安くてしかも築浅で中古物件が出てるのか考えますとね…
しかし新三郷ららシティから一歩外れると、そこにはよもや東京23区の隣とは思えないド田舎風景が容赦なく広がっている件。だだっ広い農地の先には埼玉県屈指のマンモス団地…三郷市はフジテレビ出身のフリーアナウンサー、カトパンさんの地元でございます。ヤンキー上がりでもアナウンサーになれるのだから三郷住まいでも案外悪くないかも知れませんよ。
ちょっと道を外れると昔の農地の水路にそのまま生活排水が流れ込んで小汚いドブ川になっている箇所が見られたりとインフラの悪さが目立つ。ららシティと団地を除けばこの地域はまだまだ発展途上国並みである。