駅前に残る闇市上がりの飲食街に刮目せよ
品川駅から京浜東北線でわずかひと駅、JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線の3線が交わる大井町駅周辺はサラリーマンの憩いの場である飲食街が充実しまくっている。特に駅東口の「東小路」のあたりがホットスポットだが、それ以外も見回せば結構な規模のものとなっている。
品川区と言えば雰囲気的には下町と高級住宅街が競り合っていてどっち付かずな印象もあるが、駅周辺は至って庶民的一色。東急大井町線沿線も、さっぱり垢抜けた感じがしないし、土日は大井競馬場帰りのギャンブラーのオッサン連中の盛り場ともなる。
何は無くとも「東小路飲食店街」壮絶な戦後のドサクサ建築
大井町における呑兵衛の誘蛾灯となっているのが駅東口すぐの所にある「東小路飲食店街」である。この一画は戦後の闇市起源の古い飲食店街がそのまま現在まで生き長らえているところで、新宿西口しょんべん横丁(思い出横丁)と双璧を成す、都内でも指折りの現存する「戦後のドサクサ建築」の一つに挙げられる。
細く糞狭い路地が南北に二本並行し、さらにゼームス坂通りを挟んだ東側には「平和小路」という一見さんお断り風のスナック街が並ぶマニアックな横丁も続いている。
ともかく東小路にはサラリーマンのお財布に優しい名店が密集していて、寿司一貫30円(ゲソ)から食える激安立喰「いさ美寿司」、真っ黒なスープと焦がしネギが旨いラーメンが名物の老舗「中華そば永楽」、”お食事は大井一”のどでかい看板が目立つ「洋食ブルドック」、肉屋の佇まいなのに完全に角打ちコーナーと化している「肉のまえかわ」など個性派揃い。
腹一杯食った後は昭和の闇市風情残る路地を堪能しつつふらふら千鳥足になっていると何やらお姉さんが玄関前で客引きしている怪しい店に出くわしギョッとするが、これもオッサンタウンにありがちな展開だ。
再開発されてしまった駅西口にも怪しげな呑み屋街が
大井町駅西口は首都圏では珍しく「阪急百貨店」のシマでもあったのだが、再開発計画で新しく生まれ変わった「阪急大井町ガーデン」の建物がデデーンとそびえていて、駅前スパ銭「おふろの王様大井町店」も入居している充実ぶりは良いのだが、いささか小ざっぱりし過ぎた印象がある。
しかしそんな西口の一画にも何やら戦後の香り漂う呑み屋街がこの通り生き残っていたりするもので、品川区の奥深さを思い知らされる事請け合い。以前は西口のタワーマンション「ブリリア大井町ラヴィアンタワー」が建っている土地にも似たような佇まいのオンボロ飲食店街がひっそり存在していたのだが、2009年以降はタワマン建設の為に消えてしまった。